学会について

会長 仁木 宏典

会長挨拶

日本ゲノム微生物学会 会長
仁木 宏典

日本ゲノム微生物学会の第5期(2018-2020)評議員会において会長に選出された仁木宏典です。第5期の3年間を評議員、幹事、監査の役員のみなさんの助けを借りながら、本学会の運営に尽力してまいります。会員のみなさんには、活発な研究の発表と交流を行っていただき、日本のゲノム微生物研究を大いに盛りたてていただきたいと願っております。

2007年の本学会の発足当時から10年余りが過ぎ、ゲノム微生物研究は予想を超える勢いで変わってきています。大腸菌や枯草菌などのいわゆるモデル微生物の研究は、いまや本学会の中でも少数派です。多種多様な菌種のゲノム研究を会員のみなさんで展開され、年会ではさまざまな微生物種の話題が提供されています。このような状況を生み出したのは、ひとえにシーケンサー技術およびコンピュータ技術の発達によるものです。

私が大学院に入ったのはまさにサンガー法によるDNA塩基配列決定方法が普及し始めた時代でした。P32標識したヌクレオチドをDNAポリメラーゼ反応で取り込ませ、合成されたP32標識DNAを60cmまたは90cmのアクリルアミドゲルで電気泳動し、それをレントゲンフィルムに感光して、梯子状に出てきたDNAのバンドを順番に読み取ってDNA塩基配列を決定するというものでした。すべて手作業で技術を要しました。60cmのアクリルアミドゲルづくり、電気泳動後にゲルを濾紙に写す工程は鬼門でした。反応自体がうまく行かないDNA配列領域はいろいろと反応を改良して乗り越えていきました。無事に塩基配列を解読が完了した時には破砕帯を突破したかのような気持ちになったものです。そのような苦労を知るものから見ると、一晩でクローン化したDNA産物のDNA配列を確認できるようになるとは隔世の感があります。

微生物研究はこの技術的な恩恵を最大限に受けており、特定の環境中のすべての微生物の構成をゲノム情報として明らかにするマイクロバイオーム研究はその最たる成果の一つです。腸内フローラ研究は今やヒトの健康・医療の重要課題の一つとなりました。海底の熱水噴出孔のような特殊な環境だけでなく、身の回りの土壌サンプル中の微生物群のプロファイリングなどが進み、身近な環境ゲノム情報時代の到来を今迎えています。これらのゲノム微生物研究は、ナノポアDNA シーケンサー技術によりさらに一層の発展をみることでしょう。これからのゲノム微生物研究はさらに新しい時期を迎えると期待されています。

日本ゲノム微生物学会の最大の強みは、基礎から応用まで、理学・医学・工学・農学・環境学・バイオインフォマティクス等の幅広い分野、そして様々な研究手法を得意とする研究者が参加していることです。だからこそ、微生物ゲノム研究のフロンティアで活躍する研究者を引きつけているのです。日本ゲノム微生物学会の使命は、ゲノム情報時代の広く学際的な微生物学研究者らが一堂に会する場を設け、日本の微生物研究者コミュニティーを形成することだと自覚しております。この使命に従って今後3年間を運営していきたいと思います。そのためには、会員のみなさんの活発な研究の交流をぜひ年会において繰り広げていただきいのです。

2018年2月吉日


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